ふかよみ №1 『かないくん』
< 死 の 重 さ >
![]() | かないくん 作:谷川 俊太郎 / 絵:松本 大洋出版社:東京糸井重里事務所 ![]() |
きっかけは<『かないくん』を語らう夕べ>というUSTREAMをみたことだった…
谷川俊太郎、糸井重里、阿川佐和子といえばいずれも気になる面々…
1時間半にも及ぶ番組を見てしまったらすっかり上手に
本の紹介をされた気分になり、早速入手したのだった…
60年以上前…親友でもない隣席の同級生が病死した…
この事実を思い入れのない分、客観的に状況を振り返り…
それは死について考えることになる…
前半の内容をこう書くと身も蓋もないものになってしまう
絵本なのだから作家と画家のキャッチボールが見どころなのだ
絵がほとんど文から離れているのがおもしろい
松本は谷川のテキストを参考に自分なりの物語を作り上げ
それを描いているのだろう…
出版のきっかけは「死」をテーマにした絵本を出そうと企画した糸井が
旧知の谷川にテキストを依頼…絵は人気の松本大洋
(といってもぼくは知らなかった…工藤直子の息子と知って急に関心をもったが…)
に依頼したとのこと…
<谷川俊太郎が、一夜で綴り、松本大洋が、二年かけて描いた…>
とはいかにも糸井らしいみごとなキャッチコピーだ…
コピーと言えば…テイストが変わる後半にでてくる
<死を重々しく考えたくない、かといって軽々しく考えたくもない>
という文章もこの絵本のキャッチコピーにふさわしい
手にしてこれは<白い本>だと思った…
表紙に右を向いたかないくん…
裏表紙は真っ白で小口側2㎝ぐらいでコーティングが途切れて
光沢をなくしているのが何かを暗示しているようだ…
中も特別な輝きをもった白が贅沢に刷り重ねられている
<死>を黒ではなく白で表現しているのは
画家のイメージだろうか…
本全体をとおして肯定的メッセージを感じるのはよかった
<死は生の始まり…>と受け取れるメッセージが終盤に、
それも思わぬ人物が口にする…
ぼくはこの場面で…娘に「パパの夢は?」と問われた
父(成功した建築家の設定)が「パパはもう…」と口ごもるTVCMを思い出したのだった…
感性、事象を捉える深さに年齢は関係するのだろうか…
<夢>は歳とともにしぼみ<死>は年々身近になってくる…本当?
生のポテンシャルの高い若い世代こそ、死も身近かもしれない
早世したかないくん…
実在のかないくんを傍観した谷川少年…
80代の谷川俊太郎
60代の糸井重里
40代の松本大洋
この一冊を糸井世代のぼくは 小学校時代、夏休みに多摩川で
水死したK子ちゃんを思い出しながら読み、考えたのだった…
卒業写真のK子ちゃんは 別窓で参加していた
もう変わることのないその顔は忘れられない…