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「クライドルフの世界」展へ

 7月21日(土) 以前から車内中吊り広告で気になっていた
スイスの絵本作家『クライドルフの世界』展へ行ってきた…
会場は渋谷Bunkamura ミュージアム…

午後4時過ぎだったが、会場は比較的若い女性を中心ににぎわっていた…
かなりマイナーな作家だし、楽に観賞できると思っていたのに意外だった… 
 
 入るとまず、作家紹介に続き初期の油絵が展示されている…
写実的で技術的な訓練が十分されていることが分かる…
でも、あんまりおもしろい作品群ではない

 本筋の絵本原画は200点以上展示されている
みなさん一点一点じっくりと鑑賞しているので
とても全部は無理と判断し、「くさはらのこびと」と
「ふゆのはなし」を中心に見ていくことにする…
行列のいい点はゆっくりと進むのでいやでも
丁寧に観賞する時間がとれるということ

 この2点はどちらも1970年代に翻訳され、
ぼくの勤務する図書館にも並んでいた…
しかし、不思議な雰囲気はあるものの
それほど目立つ本ではなく、地味な存在だったと思う
事実中身については印象が薄い…
改めて原画をみていくと水彩絵の具に白だけ不透明絵の具を
用いている…紙はだいぶ劣化しているけれど
絵具の発色は時間がたってかえって趣が増して
いるように感じられるのだった

 『くさはらのこびと』は見方によっては今ブレイク中の
『こびとずかん』のルーツといえるかもしれない…
伝統にのっとった正しい?こびとたちの暮らしぶりが
リアリティを持って描かれている
これを支えているのが確かな描写力と
自然観察力だということがこの展覧会で納得できた
くさはらのこびとくさはらのこびと
文・絵:エルンスト・クライドルフ / 訳:おおつか ゆうぞう出版社:福音館書店絵本ナビ

 『ふゆのはなし』は小人たち(伝説の七人のいとこ?)が
白雪姫に会いにいく後日談…
しかし、白雪姫はとちらかといえば<雪の女王>のような風情で
これは昔話の設定を使ってのクライドルフの独自の世界を
作り上げている作品だといえる…
ふゆのはなしふゆのはなし絵本ナビ

 残念だが1時間ほどで会場を後にすることにした…
記念には図録ではなく、このほど復刊されてミュージアムショップでも
販売されていた「くさはらのこびと」を購入したのだった…

 「くさはらのこびと」は右ページに絵、左ページに
テキストが配置されている
クライドルフ本人が絵の解説をしているような
テキストなので、1場面平均600字を
超えるような文章は自分で読むより、聞きながら
絵を見る方が楽しめるにちがいない

 さて、まごは喜んでくれるだろうか…
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行ってきました「フェリクス・ホフマン絵本原画展」

 8月18日(土)銀座教文館で開催されている
「フェリクス・ホフマン絵本原画展」に行ってきた…
うらわ美術館の知人から招待券をゆずってもらったのだ

会場の9階ウェインライトホールは開場間もない時間のこともあるのか
数えるくらいしか来場者がおらず ゆっくりと鑑賞することができた 

 原画展は<父から子への贈りもの> というサブタイトルのとおり
子どもや孫にあてた私家版が中心だった
これに加えてスケッチブック、すばらしい絵手紙なども展示され
予想以上に充実した内容に大満足…
10タイトルほどの展示にはどれも絵本が添えられて
手に取れる配慮があったのも行き届いている

 圧巻は「おおかみと七ひきのこやぎ」だった…
全場面を展示し、部分的には手書き絵本と印刷用原版を並べている
原画と絵本から受ける印象が それほど違わなかったのは
原画が石版画という一種の印刷物だったこともあるだろう…

 ヤギの家はホフマンのアトリエやゆかりの家がモデルになっているという
洋ナシが戸棚に乗っているのもホフマン家の実際の様子らしい
最近ぼくが人形劇(テーブルパペット)を作る際
背景の参考にしたのはこの絵本だった…
おおかみと七ひきのこやぎ―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本)おおかみと七ひきのこやぎ―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本)
(1967/04/01)
グリム

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 ぼくにとって一番思い出深いホフマンの絵本は「ねむりひめ」だ
表紙を含め多くのページに猫が登場する趣向はこれまでも
絵本の読み方の記事などでも取り上げられているが
今回の展示によるとこの本は次女クリスティアーネに贈られたもので
彼女が猫好きだったことから飼い猫を登場させたらしい…
ねむりひめ―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本)ねむりひめ―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本)
(1963/10/01)
グリム

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 また、末っ子の長男に贈った「七わのからす」では、
彼の愛用していた赤ズボンが描かれているという
現物を見ながらこうしたサイドストーリーを知るのも
原画展の大きな楽しみだ…

 さて、原画展を見た後、6階のショップでホフマン生誕100年、
福音館書店創立60周年記念出版と銘打たれた「赤ずきん」を購入…
この本は初めての女の子の孫スザンヌのために亡くなる2年前に
手作りした絵本をベースに作られている…
ホフマンが出版用に手を加えることがなかったので下書きのデッサンを
そのまま残して彩色されている…
一見ラフとも思えるがまぎれもなくホフマンの世界が広がっている…
絵とテキストのバランスが良く、読み聞かせに向いていると思う…

赤ずきん (福音館の単行本) 赤ずきん (福音館の単行本)
(2012/06/13)
フェリクス・ホフマン

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 ホフマンは自分でもかなり頻繁に昔話を子どもに語っていたらしい
彼によれば子どもにお話をするには子どもの視線に合わせて
じゅうたんに座る方法と子どもを膝に乗せる方法があり、
彼の経験では後者を子どもが好むという…
そしてホフマンは絵を描くときも決して子どもに迎合することなく
調子を落とさず描くのだという…そうだろうと思った

教文館では 3階に展示されていたホフマンの挿絵や装丁の仕事ものぞいて店を出た…
入館した時は雨模様で1階の床を歩くときにキュッキュツと靴底が音を立てるのを
心配したのだったが、1時間半後の外は暑い日差しが照りつけていたのだった

「レオ・レオニ 絵本のしごと」展へ

 Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の『レオレオニ絵本のしごと』展に行ってきた…
図書館員時代色々な形でお世話になり、気になる作家だった…
 昼過ぎに会場に入ると夏休み期間中らしくバギーに乗った乳児から小学生ぐらいの
子どもたちも結構な割合で見受けられた。「スイミー」が載った教科書でなじんだお父さん、
お母さんたちが来たかったのではないか…そしてやはり若い女性もやはり多かった。

 展示は切り口を変えた4部構成でレオニ作品のかなりの部分を押さえていた。
そんな中でデビュー作「あおくんときいろちゃん」が見当たらなかった…
でも、それは作品の成り立ちからいって当然かもしれない。シンプル極まりない画面だが、
グラフィックデザイナーらしい印刷処理でできている作品だからだ。原画そのものが
あってないようなものなのだろう…汽車の旅で二人の孫が退屈しないよう、持っていた雑誌を
ちぎって即興でお話を作ったという伝説のオリジナルが残っていたらそれは興味深い
ことだろうが…

 展示の中で印象に残ったものをいくつかあげてみると…

ひとあしひとあし―なんでもはかれるしゃくとりむしのはなしひとあしひとあし―なんでもはかれるしゃくとりむしのはなし
(1975/04/01)
レオ・レオニ

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 図書館子ども会のおり、OHP影絵をやることになり、それにふさわしい作品を
本棚で探していてこの本に出会った…『あおくんときいろちゃん』以外に知った
初めての作品だった。選んだのはフロッタージュ(こすり出し)を施した紙を切り取って
コラージュする技法がOHP向きと判断したからだ。
 デザイン的には<フラミンゴの曲がった首でできる空間に対峙するシャクトリムシ>
<長い足を登っていくシャクトリムシを斜めに見るサギ>が決まっていると思う…
原画を見た印象は…びっくりするくら予想通りだった。うまく再現されているあかしだ。

 
チコときんいろのつばさチコときんいろのつばさ
(2008/08)
レオ レオーニ

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 この作品は日本で出版されたのが2008年と新しく、存在そのものを知らなかった…
しかし、原作は1964年と古く、一見して絵も技法も他の作品と違っている。
これはインド旅行の思い出が込められている…との解説を見ると納得できる。
人物の表現、衣装の模様などに明らかにその影響があるのだった。
なかでもリアルに描かれている3体の操り人形に目がいってしまった。 


みどりのしっぽのねずみ―かめんにとりつかれたねずみのはなしみどりのしっぽのねずみ―かめんにとりつかれたねずみのはなし
(1979/04/01)
レオ・レオニ

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 珍しく油彩で色彩豊に描かれた作品…
油絵だとさすがに原画と絵本の違いが際立ち、原画は本当にきれいだ。
この作品を作る数年前にレオニはメキシコに行き、復活祭の
仮面行列に触発されてそのようすを油彩画にしており、これも展示されていた。
こうした関連をはっけんできるのは展示会のだいご味だろう…


 今回の思いがけない収穫は絵本によく登場するねずみのパーツと出会ったこだった。
型紙から鉛筆で輪郭をとり、丁寧にちぎったパーツは整理されて
いつも彼のアトリエに置いてあったのだという。

 
 一時間ほど滞在し、図録を求めてから1階への上りエスカレーターに乗ると、
入場券売り場には長い行列ができていた…レオニは1999年になくなっているけれど
彼が残した作品は様々なかたちで人々の目に触れ、影響を与えていくのだ…

 
<人間は芸術がなければパンだけでは豊かな気持ちになれない…>
有名な『フレデリック』のメッセージは直接的で個人的には照れてしまうけれど、
レオ・レオニは本当にそう思っていたのだろうな…

 でもまあ…これは別な話…

 

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プロフィール

楽葉サンタ

Author:楽葉サンタ
元児童劇団員、元図書館員…
リタイアした現在は幼児でも遊べる人形劇を楽しく研究中…
妻一人、子ども三人、孫四人

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