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ぼくの木馬座始末記 23 「シンデレラ」 1

 昭和47冬の公演は 『シンデレラ』 だった…
 
 新木馬座になって2作連続して地味な作品が続いた。営業的にも苦しかったと思う。
そこで…ということもあったか、女の子をターゲットに大本命プログラムの投入となった。

 ■ もりやすじさんのこと ■
 美術は当時東映動画に在籍していたアニメーションの神様…もりやすじだった。
 出来上がってきた舞台図、キャラクターデザイン画はどこかなつかしく…そして親しみやすかった。
その理由は簡単で彼の描いたキャラクターは日本初の長編カラーアニメ映画『白蛇伝』に始まり
『アルプスの少女ハイジ』までそれはほとんど日本のアニメの歴史そのものなのだ。
だから絵柄に見覚えがあるのは当然だった。
 もりさんの絵はぼくの人形づくりのお手本でもある。
昭和52年に講談社から発売された「ふしぎなかばん」にも上品でやさしいキャラクターが
典型的にでいる。そしてデッサン力に裏打ちされた動きのある表現がすばらしい。
長い間絶版でぼくは必要に応じて図書館で対面していた。
でもリタイアしてからどうしても手元にほしくなり、最近ネットを通じて結構なお値段で
購入したのだった。
 ところがその直後、もりさんをずっとリスペクトする活動を続けていたアニドウ・フィルムというところから
英訳つきで復刊されたのだった。一瞬ためらったけれどもやっぱり購入した。
ふしぎなかばんふしぎなかばん
(2011/12)
馬場 淑子

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図書館に勤めてからは紙芝居の『シンデレラ』を手にするたび懐かしく思い出していた。
 ぼくは平成5年(1993年)亡くなってから出た豪華本をインターネットで購入したとき、こんなメールを書いている。
 
『私はもりやすじさんが木馬座の舞台美術をなさっていたとき、制作部で仕事をしていたものです。(もりさんにギャラをお支払いし、その時待ち合わせの喫茶店代を払っていただき、恐縮した思い出があります。)現在は別の職業ですが、たまたまこの本の出版を知り、なつかしく、購入する気持ちになりました。』

 一度しかお会いしていないけれど、40代後半だったもりさんのきれいな目が印象的で、
その内面を表わしていて魅力のある人だった。

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 上の画像はケースに入った「もりやすじ画集」  森 康に 著 なみきたかし編 アニドウ・フィルム  1993.9
        右は『シンデレラ』のポスター、チラシの原画の一部…

■ 仙女・縦ロール・衣装 ■
 人形製作では僕は爺やと仙女を担当した。もりさんのデザインは明快だった。
それなのに仙女は目の表現に苦しみ、何回も作りなおしてようやく福々しい顔に仕上がった。
その顔は当時製作のアルバイトに来ていた女性に雰囲気が似ていておかしかった。
 お姫様に変身したシンデレラの髪はデザイン画に合わせて黄色の極太毛糸を使った。
苦労したのは立てロールだった。試行錯誤の末、トイレットペーパーの芯に
毛糸を巻き付けたものを取り付ける方法を採用した。ロールには黄色の毛糸を巻いた後に
茶色の毛糸を荒く巻き付けてアクセントをつけた。
 
 舞踏会シーンの衣装は光沢のある生地が多用された。しかしそれらはあまり高価な素材を
使っていなかった。そのことで忘れられない記憶がある。
 読売ホール付きのMさんという方がいた。Mさんはガラのわるいゼベット爺さん…
といった風貌で、いつも酒臭く、胸と華が酒やけで赤い人だった。
Mさんは公演中、上手袖にいて緞帳操作するのだが、それ以外はくぼみのような小さなスペースに
じっと座って芝居を見ていた。 このMさんにはずいぶん衣装の悪口を言われた。
「元の木馬座時代はもっと厚くて絨毯のような生地を 使っていた…あんな裏地みたいな生地を使ってちゃだめだ…」
そういうのだ。
ぼくはそんな全盛時は知らない。長く芝居を見続けているMさんのいうことは多分本当だろう。
そうかもしれないが、劇団をつぶしちゃしかたがないじゃないか…というのが当時の心境だった。
でも後々の『ねむり姫』のそれに比べれば確かに見劣りするものだったことは事実だ… 

 ■ かぼちゃと金の馬車 ■
 一幕の終盤に前半の山場であるかぼちゃと金の馬車のシーンがある。
このシーンに関しては道具担当として色々思い出のあるところだ。 
見せ場の金の馬車はお金をかけて注文し鉄製の頑丈な代物が出来上がってきた。
これに金ラメの布を取り付けて雰囲気を出した。
舞台ではかぼちゃが馬車に変わる時、フォグメーカーで白煙を充満させ、その中で
引き枠に乗せた馬車が舞台中央に登場し、シンデレラが乗り込み、テンポのいい音楽が流れる…
そして、お城へ向かうシンデレラが客席に向かって手を振る中で一幕が終了する。
その時馬車の車輪は休まずグルグル勢いよくまわっている。
その動力は人力で、シンデレラの足元で不自由な体勢で横になり、
車輪へつながるチェーンを回すのは体の小さいぼくの仕事となっていた。

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 馬車に変身するかぼちゃはタライ二つを合わせたものをベースに布でふくらみをつけ、彩色した。
これはぼくたちが造形で悩んでいたところ、MKさんが恐ろしい速さで作り上げたものだった。
出来上がってみるとそれなりに見えた。
 もう一つ日用品を使ったものが馬車をひく馬の頭部だった。多分時間が押していたことから
思いついたのだと思う。ごく普通のごみ箱をそのまま鼻づらに使い白のコール天生地をそのまま張り付けた。
リアルさは微塵もないが、半端な造形をするよりはかえって良かったかもしれない。
でも、今にして思えばこれは学芸会レベルといわれても仕方のないことだろう。 

 華やかな見せ場がトイレットペーペーの芯やタライ、ゴミ箱で支えられていたとは…
ここまで日用品を活用した場面はこれ以外思い出せない。

 もう一つ、シンデレラの代名詞はガラスの靴だ。当初は自前でやろうとFRPで試作品を作ったら
まるで風呂場掃除用のブーツみたいな鈍重な代物が出来上がり、透明感もなくこれはダメだ…
ということになった。そして、だれかが透明なビニール製ハイヒールを見つけてきてあっさり決着。 
業界用語でいう<ありもの>である。
人形劇で実物を使うと浮いてしまうことが多いのでたいがいは作りものにする。
まあ…ガラスの靴をビニール製で代用したのだから実物とはいえないか…
  
 ところで、 頭、衣装を着けてかぼちゃと金の馬車のシーンの稽古が始まったとき、困ったダメ出しがあった…
ここからは次の話で…
 
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プロフィール

楽葉サンタ

Author:楽葉サンタ
元児童劇団員、元図書館員…
リタイアした現在は幼児でも遊べる人形劇を楽しく研究中…
妻一人、子ども三人、孫四人

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