ぼくの木馬座始末記 24 「シンデレラ」 2
小道具、衣装の追い込みでバタバタしている時、人形を交換しろ…という連絡が来た…
かぼちゃが金の馬車に変わるシーンにでてくるネズミの面が重すぎる。
振付の関矢先生が「役者の首を折る気か…」とカンカンいう。
作りなおしといってももうそんな時間もない…何か代用するにもストックもなく思案していたところ、
いいものが見つかった。 『クマのプーさん』に出てきたカンガとルーの親子だ。
もちろんそのままでダメだが、台座を交換して布を張りかえればネズミに見えないことはない…
というわけでそのようになり、あっという間に稽古場に届けることができた。
ウルトラマンの怪獣のように変装させての<使い回し>はアリだと思う。
そのネズミ役はほんとうに小柄できゃしゃなバレリーナだったので確かに肉厚の面は酷だった。
■ 白い鳩はかわいい天使… ■
シンデレラの原話の一つであるグリム童話「灰かぶり」には小鳥や鳩たちが登場し、
様々なシーンで不幸な娘を助けてくれる。今回の台本でも白い鳩が象徴的に使われていた。
逆境のシンデレラは小さな白鳩を手に乗せて歌う…
白い鳩は かわいい天使 幸せ運ぶ 神様のお使い
白い鳩よ おまえは 私の夢を かなえてくれる…
ヒロインと白い鳩の組み合わせは前例がある。元木馬座の『白雪姫』でも「鳩さんこんにちは」という
歌に合わせて白雪姫が複数の白い鳩と遊ぶシーンがあった。
脚本もそのイメージで書かれており、この舞台でも生きている鳩を使うことになったのだ。
そこでマジックでおなじみの白い鳩(銀鳩)を、スタンドと鳥かごと一緒に調達し、世話は小道具担当となった。
『シンデレラ』はツアーも多く、餌、水、鳥かごの掃除と結構大変だった。
後年…『シンデレラ』の公演が終了し、お役御免となった銀鳩がなぜか我が家に来た。
(木馬座を離れていたのにどうしてなのか経緯は覚えていない)
ところがしばらくして、風切り羽根が生えそろい、飛翔力がアップした銀場はわずかなスキに
鳥かごから空へと飛び立っていったのだった…
■ シンデレラと王子 ■
シンデレラ役はぼくがちょっとだけ出番のあった『みつばちマーヤのぼうけん』のマーヤ役、
加藤ひとみだった。マーヤのときの印象と同様にいつも元気で明るい子だった。
面の交換とか舞台袖での着替えの手伝いなどはぼくが担当することが
多かったと思う。彼女は大阪方面に引っ越されたあとも木馬座とのご縁はあったと聞いている。…
王子役は青森出身の役者で吉谷さんといった。
彼はその後劇団四季に入り、東北弁の特技を生かして『ユタと不思議な仲間たち』の
寅吉じいさんを持ち役に今でも現役で地方回りをしている。
ぼくが退職する年にちょうど近くの文化センターで公演があり、これも何かの縁…と出かけて行った。
終了後、出演者たちがロビーに送り出しをしている時、直接お会いする機会もあり、いい思い出になった。
■ 不思議な気持ち ■
公演での楽しい思い出は2体の指人形を操作したことだろうか。
劇の進行役として、ネズミとコオロギが出てくる。 これを動かしたのだ。
「…なんだい なんだい なんなのさ…あのいやーな女のひとたち…」
これはいじわるな継母親子の様子を憤るネズミのセリフ…(声はケロヨンなのだ)
特に一番目立つ場面がある。それは開幕直前…
この芝居では緞帳を使わず、赤系統の華やかな専用幕を使うのだが、開幕の音楽が終わると
この幕に何カ所かあけられている穴から両手にはめた人形を動かして掛け合いの芝居をする。
ぼくはもちろん幕の内側だから客席からは何もみえない。でも人形たちには強いピンスポットがあたっているから
ぼくからは人形のシルエットがハッキリ見える。お客さんたちが人形の動きを注目している気配を感じながら
自分が透明人間であるかのような不思議な感覚でいたものだった。
直接スポットライトを浴びるのは恥ずかしいけれど、隠れていればけっこう面白いのだった。
小さいとはいえネズミとコオロギは一番初めに登場する役者だから、注目も集まり、セリフに合わせて
しっかりうごかさなければならないのは当然だったが…やっぱり楽しかった
■ 主題歌は「ひなまつり」? ■
『シンデレラ』はもちろん西洋の話だけれど、主題歌は超スローテンポでなんとも和のテイストだった。
特に前奏後半ははどう聞いても「きょうはたのしいひなまつり…」の歌詞がぴったりあてはまるメロディがあり
フィナーレもこの曲だからしっとりしすぎて違和感があった。
数年後、大宮市民会館での『シンデレラ』公演に招待券を見る機会があった。
ぼくが関わった芝居とは人形も小道具もだいぶグレードアップされていた。テーマ音楽も
アップテンポにアレンジされており、やっぱりこうでなきゃ…と思ったことだった。
この日、劇団の後輩で宮崎出身のTSさんが終了後の道具積み込みを随分手慣れた様子で
こなしているのを頼もしく見るとともに、自分がその世界から離れたことを改めて実感させられた。。
『シンデレラ』のスチール写真。シンデレラの上手にいるじいやがネズミとコオロギを持っている…
■ 退団へのステップ ②
夏の長電話をきっかけにMの存在がぼくの中でどんどん大きくなってきた…
彼女との出会いはぼくが高校卒業後、半年ほどキャディとして毎日働いていたゴルフ場だった。
その時Mは中学2年生。ゴルフ場のコース管理責任者(グリーンキーパーという)だったお父さんの意向で
夏休み中、アルバイトに来ていたのだ。(近年はどこの中学校でもやっている職場体験の先駆け?)
出会いといっても19歳と14歳ではジェネレーションギャップも大きく、あんまり話すこともなかった。
でもお互いに家が近いことがわかり、それ以降は時々顔を合わせることがある程度だった。
出会いから5年…彼女は短大1年生になってた。
劇団事務所に顔を見せることもあり、ぼくの一番気の合うMHさんはMのことを<5年ちゃん> と呼ぶようになった。
次の公演 『はくちょうの王子』については次の話で……
かぼちゃが金の馬車に変わるシーンにでてくるネズミの面が重すぎる。
振付の関矢先生が「役者の首を折る気か…」とカンカンいう。
作りなおしといってももうそんな時間もない…何か代用するにもストックもなく思案していたところ、
いいものが見つかった。 『クマのプーさん』に出てきたカンガとルーの親子だ。
もちろんそのままでダメだが、台座を交換して布を張りかえればネズミに見えないことはない…
というわけでそのようになり、あっという間に稽古場に届けることができた。
ウルトラマンの怪獣のように変装させての<使い回し>はアリだと思う。
そのネズミ役はほんとうに小柄できゃしゃなバレリーナだったので確かに肉厚の面は酷だった。
■ 白い鳩はかわいい天使… ■
シンデレラの原話の一つであるグリム童話「灰かぶり」には小鳥や鳩たちが登場し、
様々なシーンで不幸な娘を助けてくれる。今回の台本でも白い鳩が象徴的に使われていた。
逆境のシンデレラは小さな白鳩を手に乗せて歌う…
白い鳩は かわいい天使 幸せ運ぶ 神様のお使い
白い鳩よ おまえは 私の夢を かなえてくれる…
ヒロインと白い鳩の組み合わせは前例がある。元木馬座の『白雪姫』でも「鳩さんこんにちは」という
歌に合わせて白雪姫が複数の白い鳩と遊ぶシーンがあった。
脚本もそのイメージで書かれており、この舞台でも生きている鳩を使うことになったのだ。
そこでマジックでおなじみの白い鳩(銀鳩)を、スタンドと鳥かごと一緒に調達し、世話は小道具担当となった。
『シンデレラ』はツアーも多く、餌、水、鳥かごの掃除と結構大変だった。
後年…『シンデレラ』の公演が終了し、お役御免となった銀鳩がなぜか我が家に来た。
(木馬座を離れていたのにどうしてなのか経緯は覚えていない)
ところがしばらくして、風切り羽根が生えそろい、飛翔力がアップした銀場はわずかなスキに
鳥かごから空へと飛び立っていったのだった…
■ シンデレラと王子 ■
シンデレラ役はぼくがちょっとだけ出番のあった『みつばちマーヤのぼうけん』のマーヤ役、
加藤ひとみだった。マーヤのときの印象と同様にいつも元気で明るい子だった。
面の交換とか舞台袖での着替えの手伝いなどはぼくが担当することが
多かったと思う。彼女は大阪方面に引っ越されたあとも木馬座とのご縁はあったと聞いている。…
王子役は青森出身の役者で吉谷さんといった。
彼はその後劇団四季に入り、東北弁の特技を生かして『ユタと不思議な仲間たち』の
寅吉じいさんを持ち役に今でも現役で地方回りをしている。
ぼくが退職する年にちょうど近くの文化センターで公演があり、これも何かの縁…と出かけて行った。
終了後、出演者たちがロビーに送り出しをしている時、直接お会いする機会もあり、いい思い出になった。
■ 不思議な気持ち ■
公演での楽しい思い出は2体の指人形を操作したことだろうか。
劇の進行役として、ネズミとコオロギが出てくる。 これを動かしたのだ。
「…なんだい なんだい なんなのさ…あのいやーな女のひとたち…」
これはいじわるな継母親子の様子を憤るネズミのセリフ…(声はケロヨンなのだ)
特に一番目立つ場面がある。それは開幕直前…
この芝居では緞帳を使わず、赤系統の華やかな専用幕を使うのだが、開幕の音楽が終わると
この幕に何カ所かあけられている穴から両手にはめた人形を動かして掛け合いの芝居をする。
ぼくはもちろん幕の内側だから客席からは何もみえない。でも人形たちには強いピンスポットがあたっているから
ぼくからは人形のシルエットがハッキリ見える。お客さんたちが人形の動きを注目している気配を感じながら
自分が透明人間であるかのような不思議な感覚でいたものだった。
直接スポットライトを浴びるのは恥ずかしいけれど、隠れていればけっこう面白いのだった。
小さいとはいえネズミとコオロギは一番初めに登場する役者だから、注目も集まり、セリフに合わせて
しっかりうごかさなければならないのは当然だったが…やっぱり楽しかった

■ 主題歌は「ひなまつり」? ■
『シンデレラ』はもちろん西洋の話だけれど、主題歌は超スローテンポでなんとも和のテイストだった。
特に前奏後半ははどう聞いても「きょうはたのしいひなまつり…」の歌詞がぴったりあてはまるメロディがあり
フィナーレもこの曲だからしっとりしすぎて違和感があった。
数年後、大宮市民会館での『シンデレラ』公演に招待券を見る機会があった。
ぼくが関わった芝居とは人形も小道具もだいぶグレードアップされていた。テーマ音楽も
アップテンポにアレンジされており、やっぱりこうでなきゃ…と思ったことだった。
この日、劇団の後輩で宮崎出身のTSさんが終了後の道具積み込みを随分手慣れた様子で
こなしているのを頼もしく見るとともに、自分がその世界から離れたことを改めて実感させられた。。

『シンデレラ』のスチール写真。シンデレラの上手にいるじいやがネズミとコオロギを持っている…
■ 退団へのステップ ②
夏の長電話をきっかけにMの存在がぼくの中でどんどん大きくなってきた…
彼女との出会いはぼくが高校卒業後、半年ほどキャディとして毎日働いていたゴルフ場だった。
その時Mは中学2年生。ゴルフ場のコース管理責任者(グリーンキーパーという)だったお父さんの意向で
夏休み中、アルバイトに来ていたのだ。(近年はどこの中学校でもやっている職場体験の先駆け?)
出会いといっても19歳と14歳ではジェネレーションギャップも大きく、あんまり話すこともなかった。
でもお互いに家が近いことがわかり、それ以降は時々顔を合わせることがある程度だった。
出会いから5年…彼女は短大1年生になってた。
劇団事務所に顔を見せることもあり、ぼくの一番気の合うMHさんはMのことを<5年ちゃん> と呼ぶようになった。
次の公演 『はくちょうの王子』については次の話で……
スポンサーサイト