ふかよみ №5 『ロバのロバちゃん』
<ロバはやっぱりロバだった>
![]() | ロバのロバちゃん 作・絵:ロジャー・デュボアザン / 訳:厨川 圭子出版社:偕成社 ![]() |
テキストと絵のバランスのとれた絵本らしい絵本だ
悩みなくご機嫌に暮らしていたロバが
ある日突然自分の容姿(耳)が気になりだした…
大好きなアザミもおいしくない
そして他の動物たちのアドバイスを聞いたばっかりに
どんどん不幸になって…
まるでイソップの『ロバ売り親子』のような展開に…
こう書いたが、今風にいう<自分探しの旅>的な
テーマは気にならない…
ヒツジやブタなど、それぞれの動物にあてはめられた
性格づけが いかにもはまっているのも面白い…
表面が円滑な用紙(おそらくケント紙)に水彩で色付けされている…
この彩色がいい効果をあげ、動物たちに独特の質感を与えているのだ
これに加えて、ペンが自由で軽快なタッチで輪郭と体毛を描き出し、
色彩を引き締めている…
この絵本は図書館に勤めて一番初めに人形劇にした作品なので
思い入れも強い…
ロバの耳を前や左右に動かす面白さを
人形で表現してみたいと思ったのが選んだ動機だった
ところが 主役に力を入れすぎて時間切れとなり
ほかの動物たちは平べったいつくりで逃げてしまったことで
バランスが悪くなったのは心残りなことだった…
声を録音する時、同期の男性に雀のダニエル役
(最後に登場しロバに自分らしさ出せと励ます)を頼んだ…
彼は素朴に独特のイントネーションでセリフを読んだ…
これが実にインパクトがあり、40年近く過ぎた今でも耳に残っている…
自信を取り戻したロバちゃんはまたアザミを
おいしく食べられるようになった…
めでたし めでたし…