ふかよみ №8 『チョコレート戦争』
<文と絵のコンビネーション>
![]() | 新・名作の愛蔵版 チョコレート戦争 作:大石 真 / 絵:北田卓史出版社:理論社 ![]() |
ぼくの本棚は5段の一本だけ…
しばらく前から蔵書(というほどの量ではないけれど)は
ここに入る分だけと考えた…そのためにとりあえず棚に
ゆとりができるくらいに本を整理することから始めたのだった
そして、そこに加える本は絵本、子どもの本を中心に、
印象的な本、その本について何かを語りたいものを並べる…
そんな気持ちでいた中で、最近入手した1冊がこれだった…
1990年に増刷された著者のサイン本を当時の値段で限定販売…
という絵本ナビの企画にのったのだった…
1990年は作者の大石真が亡くなった年でもある。
『チョコレート戦争』は数ある児童書の中で、図書館員なりたての
ぼくにタイトルと表紙絵が鮮明な印象を残した本だ
そして作者と画家のコンビネーション抜きに語れない本だと思う
例えば『クマのプーさん』や『不思議の国のアリス』…
というとちょっと言いすぎかな?
物語は冒頭に作者が小学校の先生をしている友人か
ら聞いた話…とのまえぶれで始まる
内容は冤罪をかけられた小学生が
犯人と決め付ける大人に奇抜な方法で反抗し、
最終的には満足できる結末を迎えることになる…
この物語は発表当時<架空リアリズム>との評もあったようだ…
構成がうまくできていて、現実の小学生や大人が登場しながら
どこかありえない話…そんなイメージだろうか…
登場人物の中であくまで生徒の味方をする先生の姿は
<先生が先生でいられた>時代があったことを考えさせる
会話の古めかしさはしかたのないところだが、ストーリー展開で
今でも引っ張っていける力はあると思う…
絵の方に注目すると、手足のバランスが人形劇に出てくる人形ような
三頭身にデフォルメされた人物…わざとギザギザに装飾した線描…
白目がなく、かといって点描でもない特徴のある不思議なメインキャラの目…
などなど一目で北田だとわかる特徴を持っている…
カット的な絵から見開きいっぱいの絵まで全体の8割ぐらいのページには
挿絵が入っている作りはちょっと字の多い絵物語ともいえるようだ
この文章と絵のコンビネーションが成功した好例だと思う…
さて、<もくじ>の次ページに背丈ほどある三段の大きなケーキを
下から支えながら垂れてくるチョコを舐める男の子のイラストが添えられている
これはたぶん福音館の古典的絵本『ねむりひめ』のラストページにインスパイアー
されたものだろうが、非難しているわけではなく、昔からこうして少しづつ影響されながら
作品を残してきたのだし、これからもそれでいいのだと改めて思ったことだった…
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