ぼくの木馬座始末記 5 みつばちマーヤのぼうけん
意外と早く舞台に立つ日がやってきた…
■ぼくでいいんですか?■
入団して2カ月前後のころ、東京都が肝いりの親子向けの観劇会があり、
渋谷公会堂、日比谷公会堂で「『みつばちマーヤのぼうけん』を上演するという。
これはぼくが入団する直前に口演していた演目だった。
あの面接のあった1階フローリングのスタジオに外部から役者さん、音響さん、照明さんが集まり
けいこをする現場に初めて立ち会った。ぼくは物珍しさでけいこを見ていたが、ひときわ元気で
明るい女の子がいた。主役のマーヤを演じる加藤ひとみだった。
彼女は当時中学生。その後、劇団木馬座でシンデレラを演じることになる。
さて、ぼくも見学するだけではなく、クマンバチのちょい役を与えられていた。
クマンバチ軍団登場の場面を稽古してる時…
長身ひげづらの演出助手熊谷章さん(夏の公演『スケートをはいた馬』で主演することになる人)が
「バック転のできる人いない?」といった。だれもいない。ここが僕のおっちょこちょいのところなのだが、
よせばいいのに「ハンドスプリング(腕立て前転)ならできます…」と手を上げてしまった。
そして実際にやってみせると、「うーん…」といいながら、これが採用されて段取りをつけられた。
結局演出上は不本意だろうに、渋谷公会堂の下手袖から一人走り出て中央でドタンと一回転。
そこで仲間のクマンバチを手招きする…というなんともクオリティの低い場面ができあがった。
これが舞台デビューである。
ところで…小学低学年の時、創元社の世界少年少女文学全集の1冊に納められていた「みつばちマーヤの冒険」に挫折した記憶がある。出会うのが早すぎたのか、話と相性が悪かったのか…
後日ぼくが図書館員になってからいわゆる名作物(幼年向けにリライトしたもの)の是非がいつも頭にあった。
木馬座の演目には児童文学の名作が取り上げられることが多い。批判もあるが、ぼくはメディアを変えたものは別物と考えるようになった。ビジュアル化されたものはそれが挿絵であってもテキストを拘束する。
下の2冊を見比べてほしい。熊田千佳慕の精緻な描画とアニメで擬人化された描画…読者の頭の中で動き回るマーヤがどんなに違うことか…。でもどちらがどうとはいいたくない。原作を冒涜…とまで神格化する見方をぼくはしない。
■現場で対応の教訓■
この公演では舞台監督の裁量というか、決断を目の当たりにした。
日比谷公会堂は舞台の高さが低く、本公演の背景が飾れない場面があった。
舞台監督は大きな花を象徴的に残し、あとはのこぎりで切り取るという指示をだした。
ずいぶん大胆なことをするなぁ…と驚いた。その後…色々な会場、状況によって
現場合わせの臨機応変な処置をしなければならない経験をするのだが、これが最初の出来事だった。
■陰りの予感■
この芝居には木馬座演劇スクールの子どもたちがミツバチ役で大勢出演する。
倉庫から衣装を引っぱり出すと、どれも汗くさくてひどいものだった。これを洗濯するでなく、
少し干すだけでまた着せると思うと芝居の影の部分を初めて見た気がした。
付き添いの方から苦情があったというが、当然のことだった。
今改めて当時のプログラムをみると、相当手抜きというか、お金のかかっていない、
熱の入っていない様子がうかがえ、裏表紙は演劇スクールの宣伝だけである。
大道具、小道具も全盛期のそれと比べるとかなり安っぽいものですでに
木馬座の経営状態がよろしくないことが実感できるはずなのだが、
その時はまだ夢中の状態でそれどころではなかった。
『みつばちマーヤ…』のあとに『白雪姫』があるのだが、これはまた次の話…
■ぼくでいいんですか?■
入団して2カ月前後のころ、東京都が肝いりの親子向けの観劇会があり、
渋谷公会堂、日比谷公会堂で「『みつばちマーヤのぼうけん』を上演するという。
これはぼくが入団する直前に口演していた演目だった。
あの面接のあった1階フローリングのスタジオに外部から役者さん、音響さん、照明さんが集まり
けいこをする現場に初めて立ち会った。ぼくは物珍しさでけいこを見ていたが、ひときわ元気で
明るい女の子がいた。主役のマーヤを演じる加藤ひとみだった。
彼女は当時中学生。その後、劇団木馬座でシンデレラを演じることになる。
さて、ぼくも見学するだけではなく、クマンバチのちょい役を与えられていた。
クマンバチ軍団登場の場面を稽古してる時…
長身ひげづらの演出助手熊谷章さん(夏の公演『スケートをはいた馬』で主演することになる人)が
「バック転のできる人いない?」といった。だれもいない。ここが僕のおっちょこちょいのところなのだが、
よせばいいのに「ハンドスプリング(腕立て前転)ならできます…」と手を上げてしまった。
そして実際にやってみせると、「うーん…」といいながら、これが採用されて段取りをつけられた。
結局演出上は不本意だろうに、渋谷公会堂の下手袖から一人走り出て中央でドタンと一回転。
そこで仲間のクマンバチを手招きする…というなんともクオリティの低い場面ができあがった。
これが舞台デビューである。
ところで…小学低学年の時、創元社の世界少年少女文学全集の1冊に納められていた「みつばちマーヤの冒険」に挫折した記憶がある。出会うのが早すぎたのか、話と相性が悪かったのか…
後日ぼくが図書館員になってからいわゆる名作物(幼年向けにリライトしたもの)の是非がいつも頭にあった。
木馬座の演目には児童文学の名作が取り上げられることが多い。批判もあるが、ぼくはメディアを変えたものは別物と考えるようになった。ビジュアル化されたものはそれが挿絵であってもテキストを拘束する。
下の2冊を見比べてほしい。熊田千佳慕の精緻な描画とアニメで擬人化された描画…読者の頭の中で動き回るマーヤがどんなに違うことか…。でもどちらがどうとはいいたくない。原作を冒涜…とまで神格化する見方をぼくはしない。
![]() | みつばちマーヤの冒険 (小学館児童出版文化賞受賞作家シリーズ) (1996/04) ワルデマル ボンゼルス、熊田 千佳慕 他 商品詳細を見る |
![]() | みつばちマーヤの冒険 (絵本アニメ世界名作劇場) (2001/08/01) アイプランニング、日本アニメーション株式会社 他 商品詳細を見る |
■現場で対応の教訓■
この公演では舞台監督の裁量というか、決断を目の当たりにした。
日比谷公会堂は舞台の高さが低く、本公演の背景が飾れない場面があった。
舞台監督は大きな花を象徴的に残し、あとはのこぎりで切り取るという指示をだした。
ずいぶん大胆なことをするなぁ…と驚いた。その後…色々な会場、状況によって
現場合わせの臨機応変な処置をしなければならない経験をするのだが、これが最初の出来事だった。
■陰りの予感■
この芝居には木馬座演劇スクールの子どもたちがミツバチ役で大勢出演する。
倉庫から衣装を引っぱり出すと、どれも汗くさくてひどいものだった。これを洗濯するでなく、
少し干すだけでまた着せると思うと芝居の影の部分を初めて見た気がした。
付き添いの方から苦情があったというが、当然のことだった。
今改めて当時のプログラムをみると、相当手抜きというか、お金のかかっていない、
熱の入っていない様子がうかがえ、裏表紙は演劇スクールの宣伝だけである。
大道具、小道具も全盛期のそれと比べるとかなり安っぽいものですでに
木馬座の経営状態がよろしくないことが実感できるはずなのだが、
その時はまだ夢中の状態でそれどころではなかった。
『みつばちマーヤ…』のあとに『白雪姫』があるのだが、これはまた次の話…
スポンサーサイト