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ぼくの木馬座始末記 25 「はくちょうの王子」

 研究生になってから丸2年となる昭和48年春の公演は 『はくちょうの王子』だった…
 
 
 演出は関矢幸雄…関矢さんは『みつばちマーヤのぼうけん』をはじめ木馬座では数々の振付をされていた。
ご自身も舞踊家・俳優であり児童劇については 木馬座以外でも数々の実績のある方だった。
 原作はアンデルセン。福音館書店の『白鳥」を読むと王子は11人になっている。
これが台本では6人の設定になるのは ひとえに人件費削減が必要だったからだろう。
面は複製できてもこれをかぶる役者のギャラを考えたら無理はなかった。

 ■ 上演プログラムから ■
手元にある『はくちょうの王子』のプログラムを画像としてのせた。
ぬいぐるみを表紙に使ったのはたぶんこれが最初で最後ではなかったか…
そしてその理由は改めて画像を見ると想像できる。

 表紙の左からエリザ姫、若い王、大僧正。
中に入っているのは近場にいるスタッフである。
若い王をかぶっているのは製作アルバイトのSKさん…長身長髪で当時の
フォークシンガーのような体型を買われて抜擢された。彼はこの後人形劇に興味を持ち、
劇団プークで修業をして本格的にやりはじめた。
エリザにはアルバイトの女性、そして王の後ろに身を縮めている大僧正はぼくの同僚のMHさん。
若い王のブーツはゴム長靴に金色スプレーをかけてボアを張ったもの。
もちろん本番は演劇用貸靴では定番の神田屋靴店で調達した白革ブーツになった。
この撮影でのマントはレースのカーテンで代用していると思う。
プログラム製作は日程的に早いからどうしても本番と同じものにはならない例といえるだろうか。
人形もアップには耐えないし、やはり実写はプログラムには向かないと思う。

 『はくちょうの王子』からは二組のカップルが生まれている。
一組はMHさんとエリザをかぶっている女性。
もう一組は本番でエリザ姫を演じたYKさんとと若い王を演じたNKさんだ。
お二人はその後もずっと木馬座とご縁があり、また、木馬座を通じてのつながりを大切にされている。
毎年年末にご自宅で開催されるXmas会は昨年で12回を迎えている。
 
hakuchoupuroguramu016_convert_20120302113246.jpg 

 ■ アイデアマンのMKさん ■
 この芝居ではエリザ姫の目を動かすことになった。
エリザは仮面なのでこれまでのライオン王やイーヨーのように
大きな球体を入れることはできない。ここでは上司MKさんがうまいメカを開発した。
キャラメルの内箱を動かして外箱にあいた窓の絵を変える原理を応用したのだ。
ほぼ平面状の目玉ユニットは目を開けた状態でバネによって固定されている。
演者がひもを下に引いたときだけ目をつむる仕掛けだ。
更にひもを首飾りに連結させることでエリザは自然な動作で操作することが
できるように考えられていた。
MKさんのアイディアには本当に助けられ、感心することが多かった。

 ■ 白鳥たちの活躍 ■  
 王子が変身した六羽の白鳥たちは意外と出番が多かった。
しかもシーンによってメカが違う。
お城へ連れ去られるエリザを心配して首だけ出す時は、くちばしを動かす。
エリザを乗せたかごをつりさげながら海を渡る見せ場では6人の王子たちが衣装のまま舞台に
ずらりと横になってワイヤーでつりさげられた白鳥を羽ばたかせる様子は
舞台袖から見ているとなんだかおかしかった。
 クライマックスでは火あぶりにされかかっているエリザ姫のところへ上手上部から
白鳥たちがケーブルカーのようにワイヤーを伝って突っ込んでくる。
暗闇にストロボで浮かびあがる白鳥たちは不思議な効果をあげていた。
hakuchoutati017_convert_20120305224918.jpg
  ■ コロサレル… ■
 業界用語でコロスというのがある。
ある役目を果たすために幕が下りるまで一定の場所に裏方を拘束することだ。
この芝居ではぼくがコロサレた。二幕にエリザが夜中に城を抜け出し、
墓場でイラクサをとるシーンがある。この場面でぼくは照明のブリッジに登っていた。
 会場によっては登りっぱなしだったところがある。
きっかけを待って上から大きな円盤状の化け物を二つ降ろし舞台でこれを使った演技が終わると
また上に引き上げる。比較的大きなものを確実に操作するのは人間なのだ。
仕掛けは針金を芯にシーチングを張り、蛍光塗料でおどろおどろしい絵を描いただけのものだった。
でも、これが暗い中でブラックライトに 照らされながら大きくうごめく様子は
想像以上に効果があったと思う。これもMKさんのアイデアだった。

 ■ 徹夜の悲劇 ■
 ぼくの木馬座経験で一番くやしい記憶はこの公演の開幕直前の時期だった。 
クライマックスの場面、火あぶりになりそうなエリザがギリギリでチョッキを空へ投げあげ、
弟たちが人間に戻る。このとき磔に使われた大きな十字架が瞬時に花いっぱいに変わる…
という仕掛けを考えるように演出家から要請されたのだ。
 通常ならばはこれは道具担当には望むところなのだ。
無理難題が来れば来るほど、やってやろうじゃないか…ということになる。
しかし、この時は違っていた。
我々は連日半徹夜状態でフラフラになっていた。
今から思えば短時間でも集中して熟睡してから作業すればよかった。
しかし気持ち的にその余裕はなかった。やることが次々にあり、混乱していた。
夜中に劇場のある有楽町から皇居に出て半周し、半蔵門から新宿通りを麹町の劇団まで
徒歩で戻ったこともあった。(なぜ車を使わなかったのは思い出せないが)
そのくらい追い込まれていたのだと思う。そして出来上がったものは十字架の内側に仕込んだ
花のカットクロスを団扇のように拡げる…という常識的な仕掛けだった。

 関矢さんの期待に応えられなかったくやしさ、負い目が今に至るまで残っている。   
  
hakuchounooujibutai009_convert_20120217112248.jpg
 上の画像右から2番目の王子の右手は羽根のままになっている… 本番では中央猿が立っているところに十字架があり、
それが一瞬で花に変わるのだが…

■ 退職へのステップ ③ ■ 
 『はくちょうの王子』の準備中にはMが製作中の様子を見に出没する機会が増えた…
ぼくが帰る時間まで残っていたときにはMHさんが強力な助っ人になってくれた。
彼は親切にも自分の愛車ホンダN360で時には首都高を使って川崎まで送ってくれたのだった。
 
 再会からごく短期間でMの存在がかけがえのないものになっていった。
彼女はまだ19歳でぼくは24歳…今すぐというわけにはいかないが結婚を意識しはじめていた。
それは同時に転職を考えることでもあった。問題はMのお父さんだ。キャディ時代に面識はあるとはいえ
今の生活力のなさ、先行きの不安を抱えてはとてもお会いする自信がない。
水商売から堅実な仕事へ…そのとき頭に浮かんだのがそれは中高生時代の班活動で垣間見た
司書になることだった。それは恐ろしいほど短絡した幼稚な思いつきだったのだが…

 劇団員として最後の公演となった『おやゆび姫』については次の話で…

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No title

エリザ姫の目の仕掛け面白いですね。何かに使ってみたいという気持ちがムクムクとわいてきます。
といっても、日常生活で何に使うんだと考えちゃいますが。
円盤状の化け物がかんたんな仕組みながら効果を上げるというのも、よくわかります。近くで見るとた
いしたものじゃないのに、客席からみるとすごく面白いっていうのありますよね。これが手芸と違うところでしょうか。
私も失敗したと思っていた人形が、子どもたちには大ウケで、よくわからん!と思いながらも、予想外で嬉しかった思い出があります。
そして、おらあ三太がワクワクしていたMさんの登場。やっぱり。
こんな大ロマンの末、司書になった人なんて、日本中の図書館探してもいないんじゃないですか。

No title

目の開閉装置、MKさんのアイデアだったのですね。
仰る通り
「無理難題が来れば来るほど、やってやろうじゃないか…ということになる。 」ですね。それが製作の仕事であり、演出家を感心させる、唸らせるのが喜びですね。尤も私は、何回か失望させてしまいましたが。
上手く作られている小道具だと思ったのは、『ピノッキオ』に出てくる小船をオールで漕ぐゼペット爺さんです。あれはオールとゼペット爺さんの体から伸びている棒を両手で広げたり閉じたりするという単純な操作だけで、いかにも舟を漕いでいるように見えました。あれはどなたが作ったのでしょう?

おらあ三太だ さま

>舞台照明でムギ球という小さな電球をよく使いました。
ホリゾント幕前にランダムにつりさげ、青い照明をバックに
点灯すると星空が表現できます。
「はくちょうの王子」でも夜は呪いが解け、人間に戻れる王子たちと
エリザがたき火を囲む場面がありました。

 実際の星空とムギ球の星空は全然違いますが、観客は十分に星空を
感じていたと思います。それは会場へ足を運んだ人の特権ですよね。
 客席で観るということは非日常なので現実と違うモードに入り、
それが格別の感性を呼び覚ますのだと思うことがありました。

 木馬座に縁があったことから司書になり、図書館に就職できたのは
いくつかの出会いと幸運が重なってのことでした。
このことはブログで書いておきたいテーマの一つなので終わりに向けて
もう少し書くことにします。

アヨアン・イゴカー さま

> MKさんには本当にお世話になり、かわいがっていただきました。
ぼくはアヨアンさんのように直接責任のある立場になることなく、
申し訳ないくらいにいいとこ取りをさせてもらった思いがあります。

> 『ピノキオ』は退団直後の作品で、受験勉強のため舞台も一度見ただけでした。
ぼくとほとんど入れ替わりになったFさん、Hさん、Nさんの仕事でしょうか…
27回でふれるつもりですが、美術の安野光雅がアイデアマンなので
からんでいる可能性もあるような気もします。
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プロフィール

楽葉サンタ

Author:楽葉サンタ
元児童劇団員、元図書館員…
リタイアした現在は幼児でも遊べる人形劇を楽しく研究中…
妻一人、子ども三人、孫四人

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