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ぼくの木馬座始末記 29 『こじき王子』から『ねむり姫』

昭和50年夏、岡本愛彦演出の 『こじき王子』 が公演中のころ、ぼくは図書館でのアルバイトをしていた。
 ■ 『ならなしとり』 ■
 夏休み期間は資料整理関係の仕事が半分、残りは児童向けイベントがらみだった。
はじめのうちは午後になると書庫の一角で人形劇の準備を命じられ、こんなことを
していていいのかしら…と思ったりもした。これもまたテストの一環だったのかもしれない。 
  こども会のメインとなる人形劇の演目は日本民話の『ならなしとり』。 
BGMを同時ダビングしながらの本格的な録音、劇の稽古、2回のこども会、
移動図書館のステーションになっている公民館での移動公演…
どれもが木馬座経験と重なる部分が多かった。 
こうした児童サービスに力を入れている図書館の存在を初めて知り、
その現場を体験できたことはうれしかった。

 この図書館の地下はまるで小さな劇場だった。
間口4間ほどのステージには4回路の ボーダーライト、バトンが複数並び、
上手袖にはこれらを操作する綱元があった。
照明、音響をコントロールする操作卓も立派なものだった。
さらにステージ裏には本格的な楽屋鏡を備える楽屋まで…これを見た時、
劇場に心を残しているぼくはこの図書館に就職したい…と心から思った。
 
 ■ 『こじき王子』 ■
 直接この芝居にかかわることはなかったけれど、いくつか思い出がある。
 
 衣装として甲冑が複数必要になったようで、舞台道具の店から1体レンタルし、
これから型をとって複製するというちょっとグレーな現場にたまたま顔を出したことがあった。
気まずさを感じたのは自分がすでに製作経費を気にする立場にないせいもあったと思う。
 そんなことはあったが、舞台で観る甲冑はよくできていると思った。

 気になることとしてはテーマソングの2番にちょっと違和感をもった。
スタッフ間では話題にならなかったのだろうか… 

  こじき王子がやってくる サッサッサッ
  町でも村でも大騒ぎ 気狂い王子は人気者
  こじき王子は正しい王子 サッサッサッ

音楽になってしまえば聞き流してしまうかもしれない…
でも幼児と付き添い対象の商業演劇としてはどうだったのか…
当時は現在ほど言葉狩りがなかったということなのだろう。
<違和感をもった>…と書いたが、ぼく自身は言葉狩りの風潮は間違いだと思っている。
ただ、さすがに<気狂い王子>は<人気者>にはなれないだろう…

kojikioujibutai012_convert_20120217114143.jpg  
                               『こじき王子』舞台写真 右の方に甲冑をつけた人物がいる。
 ■ 就職内定 ■
 この年度はとうとう市の職員採用試験は行われなかった。
それでも欠員補充のため、変則的な形ではあるが、就職する見通しが立ったところで
Mのご両親に結婚の申し込みに行った。
考えていたあいさつをする間もなく、お父さんはぼくにビールをすすめた。
当時のぼくは缶ビール1本が限界だったのにすすめられるまま
フラフラになりながら大瓶2本分を飲んだ。これがお父さんなりの
OKだったのだろう。ぼくにとっての一番のハードルを越えた日だった。 

 ■ 『ねむり姫』  ■
 昭和50年12月…Mは退職し、冬の公演『ねむり姫』のアルバイトをした。
そして端役で舞台にも立つことになった。
ぼくも就職を控え、この公演が最後のお付き合いと思い、製作のお手伝いをするなど
事務所への出入りが復活する。こうした中、いくつかの変化を感じた…

 まず、衣装が格段に良くなっていた。
特に面につける襟が立体的に形が整っており、これは舞台衣装を専門に
扱っている人の仕事だった。
面もこれまでより特徴的なクセのあるスタイルで統一されていた。
これはアヨアン・イゴカーさんがブログでも触れていることだが、 
美術の石倉欣二のセンスが全体に行きわたっているのだった。
本来は当然こうあるべきだった。
分家してからの木馬座には美術のプロが不在だった。
アニメの作画監督、デザインのアートディレクターにあたる
ポジションもなかった。だからデザイン画をもとにしていても
作品ごとの統一感が出せなかったのだ。
 統一感の観点からはちょっと残念な部分もあった。
プログラムに使われている6葉の挿絵に違和感をもった。
絵の善し悪しではなく、表紙や舞台美術と明らかに違う 
世界がそこにあることが問題と思った。どうして石倉さんに
依頼しなかったのか…これもまた製作費の問題か?。

 読売ホールでの公演中、一日だけだが、直接舞台に関わる
機会があった。舞台の前半、森が眠りに包まれるシーンと
後半に眠りから覚めるシーンにアニメーションが使われていた。
16ミリ映写機で投影する技師の都合が つかない日があり、
ぼくが映写したのだった。4,5年前に地元の公民館で開催された
16ミリ映写技術講習会に参加し、修了証を取得していたことが役に立った。
 普通なら決して立ち入ることのないホールの映写室に入った時、
自分の短い木馬座キャリアで一番思い出深い読売ホールで最後になって
こんなことがあるのだなぁ…と不思議な気持ちになった。

 ■ 卒業のピンチ ■
 短大の日常風景に昼休みのソフトボールがあった。
食事もそこそこに数少ない男子学生が狭い校庭に集まった。
そこには職員や非常勤講師も加わり貴重な交流の場にもなっていた。
ロシア語の先生もそんな常連の一人だった。 短大は2ヶ国語が必修だ。
ぼくは浅く広く…と考え、英語以外に敢えて1年次は中国語、
2年次にはロシア語を選択した。これがひどい足かせになったのだ。
ロシア語が全く頭に入らない。三学期最後のテストもひどい出来だった。
最後のロシア語授業が終わる帰りがけ、先生が言った。
「どうしても単位が必要な人はぼくのところにきてください」
 自分に向けたメッセージだと受け止めたぼくは他の学生の目も気にせず
先生のもとへダッシュしたのはいうまでもない。
「就職決まっているんです。お願いします」

  昭和51年の春、短大卒業と、図書館員としてのスタート、木馬座からの本当の卒業については次回、最終回に…
 


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No title

バレエの演目「眠れる森の美女」でも、百年の眠りに入るシーンは、それぞれのバレエ団で違いはあるものの、とても幻想的な美しいシーンです。
16ミリを使ったバレエは見たことないと思います。どんな感じなのか見てみたいものです。
それにしてもサンタさん、いつ勉強していたんですか? 

おらあ三太だ さま

> 16ミリを使ったのは場面転換のつなぎでした。
ピント合わせと位置決めはしてありますので映すにあたっては
スクリーン、大道具転換とのタイミングを合わせることに集中しました。、
それほどクオリティの高い映像ではありませんでしたが、観劇中に見れば
目新しさもあってそれなりの効果はあったと思います。

 ぼくが地元の公民館での受けた16ミリ映写機操作講習は一日がかりのもので
弁当持参でいった記憶があります。
読売ホールの映写機は備え付けのものではなく、多分劇団がレンタルしたものだと思います。
 

No title

『こじき王子』は1976年の夏に入社時に見ました。結局この作品は、集客が好くなかったということでお蔵入りになりました。私のいた6年弱の間に再演されることはありませんでした。マークトゥウェインの作品自体はとても面白い作品ですが、私が入社時に見た木馬座のものは、残念ながら感動のない作品でした。同じ時に見た『シンデレラ』の方が、完成度がずっと高いと思いました。
『こじき王子』に出てくる甲冑は『はくちょうのみずうみ』でも使用しました。実際に体につけてみましたが、西洋人が使うものにしては小さすぎるのではないか、と思いました。

アヨアン・イゴカー さま

> 演劇レパートリーにも寿命というか…旬があるのかもしれませんね。
『こじき王子』はお客を呼べないのは理解できます。その点、ブログにも書きましたが、
『ピーターパン』『シンデレラ』は現代にも通用する楽しめる要素がいっぱいあるのだと思います。

 半年間お付き合いいただきましたが、次回が最終回となります。
せっかくですので前向きにしめたいと思っています。
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プロフィール

楽葉サンタ

Author:楽葉サンタ
元児童劇団員、元図書館員…
リタイアした現在は幼児でも遊べる人形劇を楽しく研究中…
妻一人、子ども三人、孫四人

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