ふかよみ №7 『ゆかいなどろぼうたち』
<人形劇にぴったり>
![]() | ゆかいなどろぼうたち (新しい世界の童話シリーズ) (1966/01) トールビョールン・エグネール 商品詳細を見る |
子どもの本にも泥棒が主人公の話は多い…
お話なんだから現実離れしたほうが楽しめるともいえるし、
やってはいけないことに魅力を感じるともいえるだろう…
これはそんな1冊…
舞台はどこかにある暖かい南国地方のイメージのあるカルデモンメ町…
ここに住んでいる人はだれもどこかのんびりと気のいい人たちばかり…
そして歌が大好き…登場人物は人を捕まえることの嫌いな
巡査のセバスチャンと優しい奥さん…高い塔で一人暮らしの老人ト―ビアス、
料理が上手できれい好きなソフィーエおばさん…
そしてライオンを飼っている無精で食いしん坊などろぼう三人組…
町には自動車はなく、二階建てのチンチン電車が一両あるだけ…
この電車には犬でもネコでも乗っていい…
こんな舞台設定で物語が始まればそれはおかしな話にならないわけがない…
愛すべきどろぼうたちはどこかあの「大どろぼうホッツェンプロッツ」の
キャラクターと重なり、南国へのあこがれはケストナーの
『五月三十五日』に通じるムードを持っている…
当時のヨーロッパの時代的背景があるのだろうか…
40代で亡くなったドイツ文学者鈴木武樹の訳がこなれていてとてもいい…
少し脱線して旧木馬座の演目『ゆかいな泥棒たち』にふれておく…
翻訳が1966年にもかかわらず、同じ年の7月には東横劇場で
初演されている…藤城清治の目配りのすごさが現れているといえるだろう…
もっとも訳者による解説によればこの話はもともと放送劇でその後人形劇でも
大成功を収めたとあるからいかにもお芝居向きな話には違いない…
どろぼう三人組の一人がカスペルという名前なのも、
もともと人形劇を意識していたとも思えるのだ…
この本は魅力的な登場人物を生み出せばそれが勝手に動き出して
お話は進んでいくメカニズムを示す好例だと思う…
それも全編に流れるユーモア精神あってのことだろうが…
ともかく、人形劇の自由さを生かしたストーリーで劇を作りたいと
改めて思わせてくれる1冊だ…
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